怠け者は今日も眠る

-ディスポエマーの日常-

3/21

今年も本格的に春がやってくる兆しが見えて、そういえば毎年春が来るぐらいの季節になると大体絶望的な気分になっているな、と思い出す。

季節の変わり目というのは大体何かその変わりゆく次の季節のイベントを彷彿とさせるものだし、あああの季節にはあれがしたいだのと、どうしても夢想をしてしまう。

 

ここ最近は制作スケジュールがあまりにも鬼で、かつ自分の作品に関しては妥協せず取り組みたいもののグッと来るものが出てこず、納期だけが迫ってくるというかなり地獄に近い状態だったのも相まって、この春らしさというやつが経てきた年齢ほどには世の中の遊びを知らないコンプレックスを刺激してきやがって大変なわけだ。

 

若かった頃、気付いた時には金がなかった。

まともな会社員になったこともないし、田舎町か新宿の片隅の風呂なしガス無しのやばい物件にしか住んだことがない。

普通の人が会社で働いて、休みの日にする遊び、みたいなものを僕は一つも知らない。

やり直しのききづらい、失敗に不寛容だと言われる日本社会。割とその只中を泥水をすするように生きてきた自覚がある。

もちろん後悔はない。

「自己責任でしょ」と言われたら反論出来ない程度には自分の生き方にも問題はあったし、やりたいことがあって、好きなものがあって、そのために使ってきた時間はかけがえのないものだ。

20代のことなど大して覚えていないことが、強みでもあるが逆にコンプレックスでもあるということなのだろう。

我ながら暗い青春だったとは思うが、そのせいかキラキラした人たちを見るとどうしても「ああ、ここは自分の居場所ではない」と思ってしまう。

しかも、最近はそういう人たちと会うことが多い。それは自分もキラキラしているということなのか?

少なくとも自分はそう思わない。思えるような環境にいない。

 

今さらになって周りが輝いて見え始めた原因はよくわかっている。

わざわざ口にするほどのものでもない人からすれば取るに足らない、だけど自分にとってはそこそこ大きな原因。

どうせ誰にもわからない、と半ばヤケクソ気味に作った昔の曲を思い出す。

いくら説明したところで僕の気持ちは僕だけのものだし、コミュニケーションは誤解と自己解釈の繰り返しでしかない。完璧な相互理解なんて存在しない。

 

もう過去を語ることは出来ないと思っている。

僕くらいの人間が過去を語れるのは、ある程度の実績を出して請われた時だけだ。

「俺が若い頃には」で始まる話をありがたく聞くような人間はいないし、いるべきじゃない。

では一体、自分が抱えてきた葛藤をどう処理すればよいのだろうか?

歌にすればいいのか?

まあ出来るだろうけど、いい曲になればなるほど、それは自分の手元を離れて聴く人それぞれのストーリーに組み込まれていくというのが最近よくわかる。

いいコンテンツは多分、作り手の元からは離れていく。

逆に歌にしたところで大していい曲にならないのであれば、それは本意ではない。

要するに歌にしたところで何も解決はしない。

 

だとしたところで、結局前進し続けることでしか求めるものを得ることは出来ない。

きっと自分の人生はそう設計されている。もう後戻りは出来ないししたくもない。

要するに作り続けることでしか自分は救われない。

自分の居場所はライブハウスでもクラブでも、会社でもない。

楽器と箱とゴミと、たまに猫に粗相されるベッドしかない、ただ曲を作り続けるこの部屋だけなのだろうと今のところは思っている。

いつか今を振り返って笑いたいところだが、「俺が若い頃には」話にならないように気をつけなきゃならないな。

そして笑える状況というのがどんな状況なのかを今からちゃんと考えて行動しないときっとそれは実現しない。

 

春がきているのもそうだけど、最近ずっとSNSで当たり前に繰り広げられている下らないやりとりに当てられてしまっているのかもしれない。

誰も彼もみんな言っていることが同じで、それはもちろん自分が選んだ情報がそう出来ているから当たり前なんだけど、どうしてみんなこんなに怒ってるんだろう、とか、どうしてみんなそんなに下らない情報のことが好きなんだろう、とか思ってしまう。

もしかしたら気分が晴れない原因はこっちの方が大きいのかもしれない。

 

インターネットは元来固定された環境を壊すのが役割だったと思いたいんだけど、今は憂さ晴らしのために使われてる側面は否定出来ないというか、人との関わりを求めること自体が他人の目からするとそう映ってしまう場面というのは多いのかもしれない。

満たされない、そして自己分析が出来ずその解決の方法を他人に求めることしか出来ない人たちの声なき声だとか。

あるいは意識が本当に高い人たちが高度な知的活動を純粋に楽しむ様子だとか。

特に何も考えず原始的に喜怒哀楽や性的欲求を刺激されて情報を右から左へ搬送する人たちだとか。

そういうものにちょっと疲れてるんだよね。

一回やめてもいいのかもしれないとすら思ってるけど、それはさすがにしないかな。

 

何かオチもなく好きなこと書いてしまったがちょっとスッキリしてきた。

今夜は何とかして歌詞を完成させねばならぬな・・・。歌詞は本当に大変。

 

本日のおべんちゃらは以上です。